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疾患 ③舌咽神経痛



原 因

ほとんどの場合、舌咽神経に血管が接触し、神経を圧迫することで舌咽神経が過敏になり、喉に痛みを発してしまうことで起こります。まれに脳腫瘍が存在し、原因となることもあります。

症状と診断

診断には問診が必須です。痛みの性状、何等かの誘因があるかどうかなどにて診断します。痛みが耳の方に放散することもあります。

画像診断

舌咽神経を血管または腫瘍が圧迫して起こる病気ですので、画像にてその状況を確認することは重要で、MRIが有効な手段です。しかしながら、舌咽神経は非常に細い神経であるため、必ずしも血管との接触がわからないこともあります。一方で腫瘍は容易に診断可能です。神経と血管の接触、または腫瘍があるからといって全ての患者さんに舌咽神経痛が起こるわけではありません。ですから診断には症状が優先されます。つまり、症状があった上でのMRIによる確認、という順番が適切な診断方法です。ほとんどの場合、細いかまたは中程度の太さの動脈(後下小脳動脈)が関係していますが、時に太い動脈(椎骨動脈)が関与しています。

治療法の選択

舌咽神経痛には薬物治療、神経ブロック療法、手術治療があります(参考資料※1 C鑑別疾患・類縁疾患 XII)。

治療法1. 薬物治療

まずは薬物治療を行います。痛みの性状を確認した上で、症状に見合った処方を行います。何らかの刺激で鋭い痛みが発作的におこる場合、カルバマゼピン(テグレトールⓇ)が効果を発揮することが多く、それを継続して痛みを緩和している患者さんはたくさんいらっしゃいます。しかし眠気、ふらつき、薬疹、肝機能障害など副作用にも注意が必要な薬です。カルバマゼピンに限らず、舌咽神経痛に対する薬物治療を導入する場合には副作用予防の観点から、少量から開始することが大切です。

治療法2. 神経ブロック療法

舌咽神経に直接的に神経を障害させる薬剤を注入、または直接的に熱による凝固を行い、一時期的に神経を麻痺させて痛みを感じなくさせる治療法です。主としてペインクリニックで行われています。神経ブロックは当院で行うことができませんので、ご希望の場合には経験ある施設に紹介いたします。

治療法3. 手術治療

舌咽神経痛の根本治療です。血管が原因となっている場合について説明します。手術では、血管を神経から離す、つまり減圧(頭蓋内微小血管減圧術K160-2)を行います。全身麻酔下に身体を横に向け、頭部を固定します。耳の後ろごく一部を除毛し、直線状に皮膚切開を行います。頭蓋骨には500円玉程度の穴をあけ、その下の硬膜を切開した後に脳脊髄液を排出し、手術顕微鏡を用いて手術を行います。
適切にくも膜を切開しながら小脳と頭蓋骨の間を通って三叉神経にアプローチします。顔面神経から血管を減圧する方法には大まかに2つの方法があり、神経と血管の間にクッションを挟んで減圧する方法(インターポジション法)と、神経から血管を離して固定する方法(トランスポジション法)です。世界的にはインターポジション法が主流かと思いますが、日本脳神経減圧術学会(※2)ではトランスポジション法を推奨しており、当院では伝統的にトランスポジション法を採用しています。当院ではこの手術の際には、聴力障害の合併症予防のために、聴性脳幹誘発電位(BAEP)モニターを装着し、聴力をモニターしながら手術を行います。


【舌咽神経痛に対する頭蓋内微小血管減圧術】

血管と神経のイメージ

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手術治療の効果について

発生頻度が少ない疾患であるため、治癒率の算出が難しい側面がありますが、世界的なデータのまとめでは、90%の治癒率と報告されています(※3)。

【参考資料】
※1 標準的神経治療:三叉神経痛 日本神経治療学会2021年(インターネットにて閲覧、ダウンロード可能)
※2 一般社団法人 日本脳神経減圧術学会
※3 Luら(米国)World Neurosurg. 2018 Dec;120:572-582.(英文)