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疾患① 片側顔面痙攣



原 因

ほとんどの場合、顔面神経の根元に血管が接触し、神経を圧迫することで顔面神経が過敏になり、顔を不随意にピクピクさせてしまうことで起こります。

症状と診断

診断には問診と視診がとても大切です。症状が非常に軽微であったり、発症して間もない時期であったりすると適切な診断に至らないことがあります。あまり症状が出ていない段階で受診される場合には、出ているときの様子をスマートフォンなどで録画して頂いて持参されるのも診断には有効な方法です。片側顔面痙攣は左右どちらかの顔面が勝手に動いてしまうという特徴を持ち、「顔面の不随意運動」という病態の一疾患と捉えることができます。つまり片側顔面痙攣以外にも顔面が自分の意志に反して勝手に動いてしまう病気は他にもあります(参考資料※1 Table 1 不随意顔面運動の鑑別診断)。顔面の不随意運動を呈する病気の中で、片側顔面痙攣のみが唯一手術にて完治させられる病気であるため、手術する場合には適切な診断が必須となり、そのためには症状の経緯の確認と症状が出ているときの視診がとても大切です(片側顔面痙攣以外の顔面の不随意運動に対して手術を行っても良くなりません)。

画像診断

顔面神経に血管が圧迫して起こる病気ですので、画像にてその状況を確認することは重要で、MRIが有効な手段です。しかしながら、神経と血管の接触があるからといって全ての患者さんに顔面痙攣が起こるわけではありません。ですから診断には症状が優先されます。つまり、症状があった上でのMRIによる確認、という順番が適切な診断方法です。ほとんどの場合、細いかまたは中程度の太さの動脈(前下小脳動脈または後下小脳動脈)が関係していますが、半数近い患者さんで太い動脈(椎骨動脈)が関与しています。

治療法の選択

薬物治療、ボツリヌス毒素注射、手術治療があります(※1)。薬物治療が非常に効果的であるという証拠はなく、眠気などの副作用もあることから、当センターでは原則として処方はしていません。

治療法 1. ボツリヌス毒素注射

顔面の痙攣している部位にボツリヌス毒素(ボトックス®)をごく少量注射するもので、筋肉の緊張をやわらげる効果により、片側顔面痙攣の症状が緩和されます。効果は3~4か月持続します。そのため、効果が切れるころに注射を繰り返して行います。症状が軽微である場合に治療をお勧めしないこともあります。

治療法 2. 手術治療

片側顔面痙攣の根本治療です。血管を神経から離す、つまり減圧(頭蓋内微小血管減圧術K160-2)を行います。全身麻酔下に身体を横に向け、頭部を固定します。耳の後ろごく一部を除毛し、直線状に皮膚切開を行います。頭蓋骨には500円玉程度の穴をあけ、その下の硬膜を切開した後に脳脊髄液を排出し、手術顕微鏡を用いて手術を行います。
適切にくも膜を切開しながら小脳と頭蓋骨の間を通って顔面神経にアプローチします。顔面神経から血管を減圧する方法には大まかに2つの方法があり、神経と血管の間にクッションを挟んで減圧する方法(インターポジション法)と、神経から血管を離して固定する方法(トランスポジション法)です。世界的にはインターポジション法が主流かと思いますが、日本脳神経減圧術学会(※2)ではトランスポジション法を推奨しており、当院では伝統的にトランスポジション法を採用しています。
当院ではこの手術の際には、聴力障害の合併症予防のために、聴性脳幹誘発電位(BAEP)モニターを装着し、聴力をモニターしながら手術を行います。


【片側顔面痙攣に対する頭蓋内微小血管減圧術】

血管と神経のイメージ

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【閲覧注意】
手術中の動画の為、不快に感じる恐れがあります。閲覧にはご注意ください。

手術治療の効果について

日本脳神経減圧術学会の複数施設の共同研究において、トランスポジション法を原則とした手術を行った片側顔面痙攣の改善率は手術後3年間で94.4%(治癒率は87.1%)、合併症率は3%でした(※3)。

【参考資料】
※1 標準的神経治療:片側顔面痙攣 日本神経治療学会2008年(インターネットにて閲覧、ダウンロード可能)
※2 一般社団法人 日本脳神経減圧術学会
※3 溝渕ら Neurosurgery. 2021 Mar 15;88(4): 846-854(英文)