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ホーム > 診療科・部門紹介 > 診療科・診療センター > 眼科 > 白内障治療:多焦点レンズのご紹介

白内障治療:多焦点レンズのご紹介



はじめに

三井記念病院では白内障手術を受けられる約4割の患者さんが多焦点レンズを選択されています。この度2020~2021年にかけて多焦点レンズを入れられた患者さんに多焦点レンズについてのアンケートをお願いし、多くの患者さんから様々なご意見をいただきました(回答数:258名)。
ここでは実際に多焦点レンズを入れられた患者さんの声をご紹介しながら多焦点レンズについてご説明します。

単焦点レンズと多焦点レンズの見え方

当院では単焦点レンズの焦点距離を
①遠く
②近く
③中間

の3つの中から選択していただいています。それぞれの見え方のイメージをお示しします。

単焦点レンズ:焦点距離ごとの見え方のイメージ

①遠く

②近く

③中間

いずれの場合も焦点を合わせたところはよく見えますが、それ以外のところはメガネが必要になります。③の中間距離にピントを合わせた場合は遠くも近くもある程度みえますが、はっきり見たいときは遠くと近くとそれぞれメガネが必要になります

多焦点レンズの見え方(イメージ)

多焦点レンズの見え方イメージ

多焦点レンズは単焦点レンズに比べるとコントラスト感度はやや落ちますが、手元から遠くまで幅広く焦点を合わせることができますのでメガネを使う頻度は大変少なくなります。

多焦点レンズの適応

多焦点レンズは残念ながらどなたにも入れられるわけではありません。
角膜の不正乱視が強い場合、水晶体をつるしている糸(チン小帯)が弱っている場合は多焦点レンズを入れられないことがあります。入れられるかどうかの最終判断は手術中ということになりますので、第2希望の単焦点レンズの準備もしておきます。


白内障手術後の見え方

「手術をしたらすぐ見えるのですか?」
というご質問を受けることがあります。アンケートの結果からもわかるとおり翌日までに約8割の患者さんが見えるようになったとのお答えでした。手術後すぐに新聞が読め、コンピューター作業が可能というわけではありませんが、視力は徐々に上がってきますのでおおらかな気持ちで待つことも大切です。

※出典:当院白内障手術後の患者アンケート(2021-2022)

メガネの使用頻度について


※出典:当院白内障手術後の患者アンケート(2021-2022)

メガネを全く使わない、ほとんど使わない方が全体の80%

単焦点の眼内レンズ(遠くが見えるレンズ)では、ほぼ全員の方が老眼鏡を使用していますので、多焦点レンズではメガネを使用する頻度はずいぶん低いことがわかります。
メガネを使う方は、細かいものを見る、暗いところで見る、など条件が悪いところで老眼鏡を使用される方が多いようです。

ハロー・グレア、スターバストなどの光視症

暗いところで光を見るとグレア(光がにじむ)、ハロー(光の周りに輪が見える)、スターバースト(放射状に広がる)があります。どれも光をまぶしく感じることになりますが、これは多焦点レンズの一番のデメリットではないかと考えています。多焦点レンズの種類によっても多少差がありますので、それについては次の「多焦点レンズの違い」のところで後述します。また防眩対策についてもご紹介します。

多焦点レンズの違い

多焦点レンズは様々なメーカーから発売されていますが、「どのレンズが自分に合っているのか」「それぞれどのような特徴があるのか」患者さんから質問を多く頂きます。そのため、当院で使用している多焦点レンズの中でPanOptixとSynergyについてそれぞれの違いをご紹介します。
自分にはどの多焦点レンズが合っているのか参考にしてください。

焦点距離は?

多焦点レンズは近くが見えるといっても近づけすぎてはピントが合いません。
「一番見やすい距離」「近づけたらどこまで見えるか」について、実際に手術を受けられた皆さんの焦点距離を測定しました。


Synergyの方がPanOptixより近い距離まで見えることが分かります。強度近視でとても近い距離で見る習慣がある方、スマートフォンの使用頻度が高い方、小柄で腕の長さが長くない方はより近い距離が見える方が楽です

ハロー、グレア、スターバーストなどの光視症は?

「全く気にならない」「ほとんど気にならない」と回答した方がPanOptixの方は66%、Synergyの方は30%でした。
PanOptixの方がSynergyより光視症が気にならない方が多くいらっしゃいました。

夜間の運転についてはどちらのレンズも約半数の方がされていて、光視症が運転に支障ないとお答えの方が
PanOptixの方が若干多いという結果でした。
夜間、外で活動する方、運転する方は光視症が少ない方が体への負担は抑えられます。

※出典:当院白内障手術後の患者アンケート(2021-2022)

レンズ、手術費用

PanOptixとSynergyとも2019年に選定療養に指定され、手術費用が保険適応となりました。それでも機能が高い分、どちらも大変高額なレンズです。手術後の満足度は「大変満足」「やや満足」と回答した方がPanOptixは88%、Synergyは83%と非常に高い結果となりました。

※価格は税込

防眩対策

光視症は夜間運転する方には支障がある場合があります。ここでは白内障手術をした患者さんが防眩対策として行っている一例をご紹介します。

①プリズム ゴルフ機能つきのサングラス

ゴルフに必要な色彩やコントラストを強調することにより、くっきりとした視界が得られます。光の可視光線透過率は低いにもかかわらず、白いボールがハッキリ見えるように作られているため夜間運転中の道路の白線、高速道路の表示などが見やすくなっています。しかしながら、少し赤みがかったレンズのため、アスファルトの凸凹などは見にくくなります。夜間の運転では、眩しすぎる時にのみ使用し、暗いと感じたらすぐにはずすことが必要です。

②プリズム ローライト機能つきのサングラス

一番眩しさを感じるとされる黄色い波長の光をカットすることにより眩しさを抑えています。晴れている時の眩しさを抑えるだけでなく、曇天、雨天、夜など暗くなっても、コントラストをはっきりさせ色調の変化を起こさないため、かなり明るく見えるレンズです。色は薄いピンクパープル、透明に近いので目が透けて見えます。
アスファルトの凸凹も見やすくなるため、自転車の運転にも向いています。

③サンバイザー

車についているサンバイザーに取り付けるものでイエロースクリーンは夜の運転でもくっきり見ることができます。
クリップ式の製品は取り付けが容易で見やすい角度に調整ができ、不要な時は内側に折りたたむことができ便利です。

後発白内障

手術の時には水晶体の外側の薄い透明なカプセルだけ残し、カプセルの中に眼内レンズを入れています。カプセルはもともと自分の水晶体の一部ですので細胞が残っているのですが、その細胞が増殖して眼内レンズの後ろ側に濁りが生じることがあります。これを後発白内障といいます。多焦点レンズは大変繊細なレンズですので、わずかな濁りでも視力低下につながることがあります。
「手術をした直後より少し見えにくいかな?」と感じたらかかりつけ医の受診をおすすめします。後発白内障は数分のレーザー治療で治り、一度治療すれば再発しません。

最後に

白内障手術を受けるにあたりどのレンズを選択するかということは、その後のライフスタイルに大きく影響し、とても大切なことです。多焦点レンズは二十歳の目に戻れるというわけではありませんが、メガネの使用頻度は低く、快適に過ごすことができます。
これから白内障手術を受けられる方にとって眼内レンズ選択のご参考になれば幸いです。
その他たくさんのご意見をいただきましたので一部ご紹介させていただきます。
アンケートにご協力いただきました皆様、本当にありがとうございました。