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ホーム > 診療科・部門紹介 > 診療科・診療センター > 眼科 > 白内障治療:多焦点レンズのご紹介

白内障治療:多焦点レンズのご紹介



① はじめに

三井記念病院では白内障手術を受けられる約4割の患者さんが多焦点レンズを選択されています。多焦点レンズを入れられた患者さんに多焦点レンズについてのアンケートをお願いし、多くの患者さんから様々なご意見をいただきました。
ここでは実際に多焦点レンズを入れられた患者さんの声をご紹介しながら多焦点レンズについてご説明します。

② 単焦点レンズと多焦点レンズの見え方

■ 単焦点レンズの焦点距離ごとの見え方のイメージ
当院では単焦点レンズの焦点距離を、「①遠く、②近く、③中間」の3つの中から選択していただいています。
それぞれの見え方のイメージをお示しします。
① 遠く

② 近く

③ 中間

いずれの場合も焦点を合わせたところはよく見えますが、それ以外のところはメガネが必要になります。
③の中間距離にピントを合わせた場合は遠くも近くもある程度みえますが、はっきり見たいときは遠くと近くとそれぞれメガネが必要になります。

■ 多焦点レンズの見え方のイメージ

【 多焦点レンズの見え方イメージ 】

多焦点レンズは単焦点レンズに比べるとコントラスト感度はやや落ちますが、手元から遠くまで幅広く焦点を合わせることができますのでメガネを使う頻度は大変少なくなります。

③ 多焦点レンズの適応

多焦点レンズは残念ながらどなたにも入れられるわけではありません。
角膜の不正乱視が強い場合、水晶体をつるしている糸(チン小帯)が弱っている場合は多焦点レンズを入れられないことがあります。
入れられるかどうかの最終判断は手術中ということになりますので、第2希望の単焦点レンズの準備もしておきます。

④ 手術後の見え方

「手術をしたらすぐ見えるのですか?」というご質問を受けることがあります。
アンケートの結果からもわかるとおり、翌日までに約8割の患者さんが見えるようになったとのお答えでした。
手術後すぐに新聞が読め、コンピューター作業が可能というわけではありませんが、視力は徐々に上がってきますのでおおらかな気持ちで待つことも大切です。

※出典:当院白内障手術後の患者アンケート(2021年~2025年 対象354人)

⑤ メガネの使用頻度は?

「メガネを全く使わない、ほとんど使わない方が全体の80%」
回折型の多焦点レンズ(PanOptix・Odyssey)の約4分の3の患者さんがメガネをほとんど使用しないで生活されていました。
単焦点の眼内レンズ(遠くが見えるレンズ)では、ほぼ全員の方が老眼鏡を使用していますので、多焦点レンズではメガネを使用する頻度はずいぶん低いことがわかります。
メガネを使う方は、「細かいものを見る」、「暗いところで見る」など条件が悪い時に老眼鏡を使用される方が多いようです。
   ※各々のレンズの比較は後述します。

※出展:当院白内障術後の患者アンケート(2021年~2025年 対象378人)

⑥ 回折型の多焦点レンズ 「PanOptix」と「Odyssey」について

回折型の多焦点レンズには「PanOptix」と「Odessey」があり、どちらもメガネ無しで40cmから遠くまで切れ目なく見ることができます。
「PanOptix」と「Odessey」この2つのレンズを比較してみましょう。
■ メガネの使用頻度は?

■ 焦点距離は?
多焦点レンズは近くが見えるといっても近づけすぎてはピントが合いません。
「一番見やすい距離は?」、「近づけたらどこまで見えますか?」実際に手術を受けられた皆さんの焦点距離を測定しました。
両方のレンズとも近くは40㎝あたりがもっとも見えやすく、もっとも見えやすい距離はOdyssey、近づけるとどこまで見えるかはPanOptixのほうが若干近いという結果でした。
【  近 方 距 離 の 比 較  】
PanOptix Odyssey
もっとも見えやすい距離は? 39.3cm 37.0cm
近づけるとどこまで見えますか? 23.4cm 24.8cm

■ ハロー、グレア、スターバーストなどの光視症は?
暗いところで光を見るとグレア(光がにじむ)、ハロー(光の周りに輪が見える)、スターバースト(放射状に広がる)があります。どれも光をまぶしく感じることになりますが、これは多焦点レンズの一番のデメリットではないかと考えています。
PanOptixでは66%、Odysseyでは59%の患者さんが光視症は全く気にならない、あるいはほとんど気にならないとのことでした。
しかしながらPanOptixでは9%、Odysseyでは14%の患者さんが大変気になるとの回答です。光視症についての感じ方は個人差が大きいという印象です。不快な光視症を軽減する防眩対策についても後述します。

■ 夜間の運転 と 光視症について
どちらのレンズも約半数の方が夜間も運転をされていて、光視症が運転に支障ないとお答えの方がOdesseyの方が若干多いという結果でした。

⑦ 焦点深度拡張型レンズ(EDOFレンズ) 「Vivity」と「PureSee」について

レンズのピントの合う範囲を広げることで遠くから中間距離、日常生活に必要な近方距離をメガネ無しで見ることができます。光視症は単焦点と同程度で夜間の運転が多い方に向いています。しかしながら近方がすこし弱く、細かいものを見る時は老眼鏡が必要なことがあります。
■ 焦点距離は?
Vivityの最も見やすい距離は多焦点レンズPanOptix、Odysseyと比較して少し遠くなっています。PureSeeはデータが揃い次第ご報告します。
【  近 方 距 離 の 比 較  】
焦点深度拡張型レンズ 回折型の多焦点レンズ
【 Vivity 】 【 PanOptix 】
【 Odyssey 】
もっとも見えやすい距離は? 44.3cm 39.3cm 37.0cm
近づけるとどこまで見えますか? 31.1cm 23.4cm 24.8cm

■ 夜間の運転 と 光視症について
焦点深度拡張型レンズは、光視症が少ないのがメリットの1つです。
72%の方は夜も運転され、83%の方が光視症は運転に支障ないとのお答えでした。

⑧ 手術の値段は? (回折型の多焦点レンズ・焦点深度拡張型レンズ)

PanOptix、Odessey、Vivity、PureSeeとも2019年に選定療養に指定され、手術代が保険適応となりました。
それでも機能が高い分、どちらも大変高額なレンズです。

【 多焦点レンズ手術代 ・ 片眼 】
乱視矯正なし 乱視矯正あり
レンズ代(自己負担分) 手術費用 レンズ代(自己負担分) 手術費用
1割負担 310,000円
18,000円 330,000円
18,000円
2割負担 35,000円 35,000円
3割負担 45,000円 45,000円
■ 金額は全て税込の金額です。     
■ 片眼を手術した場合の金額となっております。
■ 「乱視矯正なし」、「乱視矯正あり」それぜれのレンズ代はどのレンズを選んでも値段は同じです。

⑨ 満足度は?

PanOptix、Odessey、Vivityとも満足度にほとんど差がなく、このように多くの方に満足していただくことができ、大変幸せに思っています。

⑩ 防眩対策

光視症は夜間運転する方には支障がある場合があります。ここでは白内障手術をした患者さんが防眩対策として行っている一例をご紹介します。
■ プリズム ゴルフ機能つきのサングラス
ゴルフに必要な色彩やコントラストを強調することにより、くっきりとした視界が得られます。光の可視光線透過率は低いにもかかわらず、白いボールがハッキリ見えるように作られているため夜間運転中の道路の白線、高速道路の表示などが見やすくなっています。しかしながら、少し赤みがかったレンズのため、アスファルトの凸凹などは見にくくなります。夜間の運転では、眩しすぎる時にのみ使用し、暗いと感じたらすぐにはずすことが必要です。
■ プリズム ローライト機能つきのサングラス
一番眩しさを感じるとされる黄色い波長の光をカットすることにより眩しさを抑えています。
晴れている時の眩しさを抑えるだけでなく、曇天、雨天、夜など暗くなっても、コントラストをはっきりさせ色調の変化を起こさないため、かなり明るく見えるレンズです。
色は薄いピンクパープル、透明に近いので目が透けて見えます。アスファルトの凸凹も見やすくなるため、自転車の運転にも向いています。
■ サンバイザー
車についているサンバイザーに取り付けるものでイエロースクリーンは夜の運転でもくっきり見ることができます。
クリップ式の製品は取り付けが容易で見やすい角度に調整ができ、不要な時は内側に折りたたむことができ便利です。

⑪ 後発白内障

手術の時には水晶体の外側の薄い透明なカプセルだけ残し、カプセルの中に眼内レンズを入れています。カプセルはもともと自分の水晶体の一部ですので細胞が残っているのですが、その細胞が増殖して眼内レンズの後ろ側に濁りが生じることがあります。これを後発白内障といいます。多焦点レンズは大変繊細なレンズですので、わずかな濁りでも視力低下につながることがあります。
「手術をした直後より少し見えにくいかな?」と感じたらかかりつけ医の受診をおすすめします。後発白内障は数分のレーザー治療で治り、一度治療すれば再発しません。

⑫ 最後に

白内障手術を受けるにあたりどのレンズを選択するかということは、その後のライフスタイルに大きく影響し、とても大切なことです。多焦点レンズは二十歳の目に戻れるというわけではありませんが、メガネの使用頻度は低く、快適に過ごすことができます。
これから白内障手術を受けられる方にとって眼内レンズ選択のご参考になれば幸いです。
その他たくさんのご意見をいただきましたので一部ご紹介させていただきます。
アンケートにご協力いただきました皆様、本当にありがとうございました。