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ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫について


近年、乳房再建術や豊胸術後に生じるまれな合併症として、ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(Breast Implant Associated-Anaplastic Large Cell Lymphoma (BIA-ALCL))という疾患が知られてきています。この疾患はT細胞性のリンパ腫と呼ばれるもので、乳がんとは異なる悪性腫瘍です。
現在わが国の健康保険で乳房再建を目的として認可されている唯一のインプラントである、アラガン社のナトレル410は表面がざらざらしているテクスチャードタイプで、Biocell(バイオセル)という表面構造を持ち、この疾患のリスクを有するタイプに該当します。世界的には、このインプラントが挿入されている方のうち約3300人に1人(0.03%)にこのリンパ腫が発生すると報告されています。海外からの報告では、インプラントを入れてから平均9年ほどで発生し、8割の患者さんではインプラント周囲に液体がたまり、大きく腫れてくることではじまるとされています。日本では今年に入り1例の報告がありました。
BIA-ALCLを発症しても、多くの場合はインプラントとその周囲の組織(被膜)を切除することで治癒するとされています。一方で、発見が遅れた場合には化学療法や分子標的薬、放射線治療等の追加治療が必要となり、死亡した例(米国での573例のうち33例5.75%)も報告されています。

米国時間7月24日、米国の厚生労働省にあたるFDAの指導の下、アラガン社が全世界で、ナトレル410およびナトレル133を含むBiocellを用いた製品の自主回収(リコール)を決定いたしました。
これに伴い、日本国内でも同25日より自主回収が開始されました。


当院では、当面の間、新規の同製品の挿入を停止いたします。
これにともない、乳房切除と同時のティッシュエキスパンダー挿入術もできなくなります。

現在ティッシュエキスパンダー留置中の方については、自家組織での再建を考慮いただくか、より安全性の高い乳房インプラントの日本への導入までお待ちいただくこととなります。
また、他院でティッシュエキスパンダー挿入術を受けられた患者さんの自家組織での再建にも積極的に対応してまいりたいと考えております。乳腺外科主治医の紹介状をご用意のうえ、ご連絡ください。

乳房インプラントが挿入されている方については、FDAやそれよりも前に流通停止を決定していたEU、カナダにおいても、症状のない方に対する予防的なインプラントの摘出は推奨していません。腫れやしこりがないかを自分でチェックするように推奨しています。発症リスクは低く、手術に伴う出血等のリスクが上回ると考えられるためです。当科としても同様の見解です。
患者さんにおかれましては今後も同様に通院を続けていただきますようお願い申し上げます。


2019年 7月 29日
三井記念病院 形成外科・再建外科
棚倉 健太