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WAVE(経尿道的水蒸気治療)


三井記念病院泌尿器科では、前立腺肥大症に対する手術治療として、従来のTURP(経尿道的前立腺切除術)、HoLEP(経尿道的ホルミウムレーザー前立腺切除術)に加え、WAVE(経尿道的水蒸気治療)を開始しました。

1. WAVEとは?

経尿道的水蒸気治療(WAVE)とは、高温の水蒸気を用いる、前立腺肥大症の新しい治療法です。Rezum(レジューム)システムを使用して、肥大した前立腺に103℃の水蒸気を注入し、前立腺組織を約70℃まで上昇させ、組織を1-3か月かけて壊死・退縮させます。身体に対する負担が少なく、異物を体内に残さずに治療することが可能になります。これまで行われてきた温熱療法と比べ、水蒸気を利用しているため組織内の対流によってムラのない治療効果が得られ、尿道粘膜や性機能温存が可能となりました。

2.WAVEはどんな手術ですか?

全身麻酔で行う、約10分の手術です。尿道から内視鏡を挿入し、肥大した前立腺の腺腫に針を刺して103℃の水蒸気を9秒間注入します。前立腺肥大症の程度に応じて、針を刺す回数が異なります。手術後は尿道から膀胱に尿の管(バルーンカテーテル)を挿入して終了します。術後1-2日後に退院となりますが、術後尿道にむくみがある期間は排尿しづらくなることがあるため、バルーンカテーテルは患者さんの状況に応じて術後1週間~1か月後に外来で抜去します。

3.WAVE, TURP, HoLEPの違いは何ですか?

TURP(経尿道的前立腺切除術)

内視鏡先端に取り付けられたループ状の電気メスを用いて肥大した前立腺を少しずつ削るように切り取っていきます。 古くから行われ、前立腺肥大症に対する標準的な手術法ですが、他の内視鏡手術に比べると、手術中の出血がやや多くなります。

HoLEP(経尿道的ホルミウムレーザー前立腺切除術)

内視鏡からホルミウムレーザーを照射し、肥大した前立腺を被膜から剥離して繰り抜くように切除する手術です。くり抜いた前立腺はモーセレーターという機器で粉砕吸引して体外に排出します。TURPに比べて出血量が少なく、大きな前立腺に適しています。また、残存する前立腺組織が少ないため、再発の可能性が少なくなります。

WAVE(経尿道的水蒸気治療)

肥大した前立腺を切除しないため出血量が少なく手術時間が短いという特徴があります。一方、水蒸気を注入した前立腺が退縮するまでに時間がかかるため、治療効果が出るまで時間がかかります。TURPやHoLEPの方が尿の勢いの改善率は良いとされていますが、WAVEでも術後5年後まで排尿状況の改善が持続することが確認されています。
どの手術方法が良いか迷われた場合には、担当医にご相談ください。


4.どのような患者さんがWAVEに適していますか?

WAVEは身体に値する負担が少ないのが特徴です。出血量も少なく、抗血小板薬や抗凝固薬を内服中の患者さんでも治療が受けられます。そのため、従来の手術療法(TURPやHoLEPなど)が困難な患者さんが対象となります。関連学会が策定した指針では、以下のような患者さんが対象と定められています。
・ 全身状態不良のため合併症リスクが高い症例
・ 高齢もしくは認知機能障害のため術後せん妄、身体機能低下のリスクが高い症例

5.WAVEの合併症は?

WAVEは安全性の高い治療ですが、血尿(12.5%)、血精液症(7.4%)、排尿困難(16.9%)、頻尿(5.9%)、細菌感染症(3.7%)、尿閉 (4.4%)、精液量減少 (3.7%)などが報告されています。