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無痛ラジオ波焼灼療法



肝がんにおける無痛ラジオ波焼灼療法(無痛ラジオ波・無痛RFA)

2021年肝癌診療ガイドラインでは、3cm以内、3個以内の肝細胞がんに関しては手術およびラジオ波焼灼療法がともに第一選択とされています。しかし肝がんの広がりや残存肝機能の影響で、発見時に手術を受けることのできる患者さんは、全体の約3割と言われています。また、手術を受けることができても、5年以内に70-80%の患者さんで肝がんが再発します。そのため手術以外の効果的な治療法として、無痛ラジオ波焼灼療法が注目されています。近年、転移性肝がんの治療にも応用され、良好な成績が報告されるようになってきました。

無痛ラジオ波焼灼療法は、お腹を「切らず」にがんを治す画期的な治療法です。超音波で腫瘍を検出し、その場所にボールペンの芯ほどの細さの電極針を穿刺します。そして、穿刺した電極針に高周波を流し、熱により腫瘍を死滅させます。一般的には、軽い鎮静下で局所麻酔を用いて実施されますので、患者さんは意識のある状態で治療を受けることになります。これには理由があります。それは電極針を挿入する際に、患者さんに呼吸をとめていただく必要があるからです。

三井記念病院では、患者さんの苦痛を軽減するため、点滴より鎮痛剤であるペンタゾシンと鎮静剤であるミダゾラムを併用しています。一般的に広く使用されている薬剤ですが、その投与方法を工夫することにより、ほとんどの患者さんで、痛みを感じることのない治療を可能としています。2010年4月から2015年12月までにラジオ波焼灼療法を延べ約1500例の患者さんに対して施行し、ほぼ100%の方が、「痛みが全く無かった。」もしくは「全く覚えていない。」と回答しています。もちろんラジオ波焼灼療法中は、患者さんは眠った状態になり、呼吸を止めるといった指示動作は行えなくなりますが、豊富な治療経験に基づき、息を止めなくても安全に電極針を腫瘍に挿入できる技術があります。
完全に意識が無くなり、痛みとも100%無縁になる全身麻酔という方法もありますが、そのような時間のかかる大掛かりな麻酔方法には、心肺機能の事前チェックが必須であり、年間100例前後のラジオ波焼灼療法を行う三井記念病院では、多くの患者さんを治療する上で現実的に導入が難しい面があります。
また、肝がん自体が再発しやすいがんであり、生涯にわたり繰り返し治療する必要があることを考慮しますと、迅速に、安全に、効果的に治療を遂行することは、患者さん、医療スタッフ双方にとっても重要なことと考えております。

三井記念病院における肝がんに対する無痛ラジオ波焼灼療法の特徴

  • ほとんどの患者さんで無痛状態を実現します。
  • 出血のリスクが高いと言われる、透析患者さんに対しても積極的に治療を行っています。
  • 肝臓内であれば、腫瘍の局在を問いません。他臓器、脈管近傍でも治療可能です。

無痛ラジオ波焼灼療法(無痛ラジオ波・無痛RFA)

局所麻酔と点滴からの鎮痛・鎮静剤の注入で、ほぼ100%の患者さんで無痛状態を実現します。全身麻酔ではありませんので、体にかかる負担も最小限です。

透析患者さんに対する無痛ラジオ波焼灼療法

血液透析をされている患者さんは、一般的に術後の出血リスクが高いと言われています。また、血液透析は腎臓内科を中心に行われている手技のため、大きな病院でも各科同士の連携の問題のため、入院までに時間調整を要することがあります。当院では、透析患者さんにおきましても、積極的に無痛ラジオ波焼灼療法を行っております。血液透析を行ってくださる腎臓内科の先生方と密接な連携を保っていますので、スムーズに入院していただき治療を受けていただくことが可能です。2000年2月から2011年12月までに、延べ67例の維持透析中の肝がん患者さんに無痛ラジオ波焼灼療法を実施していますが、合併症は1例(1.49%)に皮膚熱傷を認めたのみで、3年生存率は84.7%、5年生存率は78.2%と、その予後は極めて良好です。

無痛ラジオ波焼灼療法の適応・・・肝細胞がんに関して

肝がんには原発性肝がん(主には肝細胞がん)と転移性肝がんの2種類があります。肝細胞がんに対する無痛ラジオ波焼灼療法の適応は腫瘍の長径3センチ、3個以内が一般的ですが、三井記念病院では肝機能が良ければこの条件を超えていても無痛ラジオ波焼灼療法を行っています。

無痛ラジオ波焼灼療法の適応・・・転移性肝がんに関して

転移性肝がんとは、肝臓以外の臓器にできたがん(原発巣)が肝臓に転移したものを指します。ほぼすべてのがん種において、肝臓へ転移する可能性がありますが、実際には消化器系のがん(大腸がん、胃がん、膵がん、胆のうがんなど、)乳がん、肺がん、喉頭部がん、婦人科系のがん、腎がんなどが肝臓への転移を認めることが多いと報告されています。

当院ではそのような転移性肝がんについても、積極的に無痛ラジオ波治療を行っています。転移性肝がんは肝硬変を合併していないため、より大きな、そして、たくさんの腫瘍を焼灼することが可能です。しかし、転移性肝がんに対する無痛ラジオ波焼灼療法はまだ歴史が浅く、外科的手術、抗がん剤治療、無痛ラジオ波焼灼療法のいずれが最良なのか結論がでておりません。

転移性肝がんの治療に関しては、無痛ラジオ波焼灼療法のみに固執せず、必要とあれば、抗がん剤治療、放射線治療等をうまく組み合わせて、患者さんがより元気に長生きできるよう努めております。

肝内の腫瘍量減退が予後延長に結びつくと予想される場合は、積極的に集学的治療の一環として、無痛ラジオ波焼灼療法をおこなっています。 (全身状態に実施不可能な場合もあります。)

治療困難部位へのRFA

  • IVC脇ドーム下
ドーム下、IVC脇、心臓脇の病変。人工胸水無し、体位変換のみでRFAを施行。再発なし。

  • S1尾状葉
S1尾状葉の病変。左葉外側からのアプローチでRFAを施行。再発なし。

術者と無痛ラジオ波焼灼療法の特性

三井記念病院におけるラジオ波治療は大木医師、近藤医師、森山医師が担当いたします。大木医師はこれまで、延べ約2500件(2016年1月現在)を無痛ラジオ波焼灼療法で治療した経験があります。ラジオ波焼灼療法にはいくつか苦手とする部分があります。ひとつは、超音波を用いて行いますので、超音波で描出できない腫瘍の治療が困難であること。もう一つは、熱で焼灼しますので、標的腫瘍が他臓器(心臓、胆のう、腸管)と隣接すると治療が困難であることです。前者に対しては、造影超音波という最新の超音波を用いて対応し、それでも描出困難な場合は、腫瘍の場所を肝臓内の血管等の位置から推察し治療を行っています。また、後者に関しては、人工胸水、人工腹水を用いて安全にラジオ波焼灼療法を行う努力を行っています。これまで治療を行った症例の中には、腫瘍が心臓と接する症例、腸管と接する症例、胆のうと接する症例、血管と接する症例、肺の直下にある症例、肝門部(肝臓の中心部分)にある症例が含まれています。入院期間が想定よりも延長してしまうような大きな偶発症の発生率は約0.5%であり、その中で一番多いものは輸血を要する出血となっています。当院におけるラジオ波治療の症例数は日本全国で12位となっております
※引用として「週刊朝日MOOK 手術でわかるいい病院2021」より。

医療従事者のみなさまへ

当院では転移性肝がんに対して、積極的にラジオ波焼灼療法を行っています。強固なエビデンスに欠ける治療であることは十分に認識しております。転移性肝がんは、転移である以上、全身の疾患であり、各がん種に応じた化学療法が治療の根幹であると考えます。また一部のがん種によっては、外科的な手術が推奨される場合もあります。私たちがこのような治療を行っているのは、標準治療で選択できるものが無くなってしまった、様々な背景により標準治療を受けることができない、そのような患者さんに少しでも元気で長生きできる時間を作るお手伝いができればと思っているからです。転移性肝がんに対するラジオ波焼灼療法は、当院の倫理委員会で正式に承認されており、RAFAEL studyとしてUMINに登録されております(UMIN000020250)。これまでの経験は、随時学会・論文等の科学的形式で公表してまいりたいと思います。

臨床研究について

消化器内科では患者さんの治療だけでなく、学会発表や論文発表にも力を入れており ます。
臨床研究を通じて、更なる医療の発展、質の向上を目指してまいります。