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難聴治療センター



真珠腫性中耳炎

耳の構造は外耳、中耳、内耳に分かれています。

外耳は鼓膜までのところで、表面は皮膚に覆われています。中耳は鼓膜の奥で、耳管という管で鼻とつながっていて、表面は粘膜に覆われています。中耳には耳小骨という、鼓膜の振動を内耳に伝える役割の小さな骨が3つあります(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)。

中耳には空気が適量入っていないと鼓膜がうまく振動しません。耳管は鼻の奥の空気を中耳に送る役割があります。一方で、耳管が開きっぱなしだと自分の声がそのまま耳に響いてしまいますから、耳管は通常は閉じていて鼻をかんだとき、つばを飲み込んだときなどに一瞬開くようになっています。耳管が開きやすい場合、鼻すすりをして一瞬耳管の出口の圧力を下げると、中耳の空気が吸い出される→中耳の気圧が下がる→耳管が閉じやすくなる、という現象が起こります。(耳管ロック)。耳管は閉じるので不快感は減るのですが、鼻すすりをするのが習慣になると中耳の気圧が下がることで鼓膜の柔らかい部分が中に吸い込まれます。この状態が繰り返されると、鼓膜の柔らかい部分が奥に袋を作ったようになり、真珠腫ができてしまいます。
なお、すべての真珠腫の原因が鼻すすりというわけではなく、耳管が開きにくいなどの原因で起こることもありますが、鼓膜が中耳に凹んでいくことから真珠腫が出来ることには変わりありません。
吸い込まれた部分ももとは鼓膜の皮膚ですので垢が付きます。鼓膜の垢は、通常ならば週〜月の単位でゆっくりと耳の入口の方に移動しますが、吸い込まれた部分が奥に入り込んでいくと中の垢が自然に外に出なくなってきます。そうするとくぼんだ部分の中に垢が充満、真珠腫となってだんだん大きくなり、周囲の骨などの構造物を破壊します。

また、真珠腫の中に溜まった垢に細菌感染を起こすと、真珠腫からの膿が外耳道に出てきて耳漏(耳だれ)が出ることがあります。

初めは耳小骨を破壊して伝音難聴(音の伝わり方の問題で、手術によって改善できる種類の難聴)が起こりますが、真珠腫が大きくなってくるといろいろな問題が起こります。脳の周りにある硬膜まで進行すると髄膜炎、内耳に進行するとめまいや手術では回復しない感音難聴(内耳がダメージを受けておこる難聴)、顔面神経に進行すると顔面神経麻痺が生じることがあります。

特殊な真珠腫

先天性真珠腫
お母さんのお腹の中で赤ちゃんの体ができるとき、外耳の皮膚がたまたま中耳に残ってしまって起こると考えられています。鼓膜から白い真珠腫が透けて見えることで診断される場合や、真珠腫が大きくなって難聴・耳漏が生じて初めて分かる場合があります。
大きくなったものほど再発しやすく、また術後の聴力も改善しにくくなります。

二次性真珠腫
鼓膜に穴が空いている状態から、中耳に皮膚の一部が入り込んでしまって起こるタイプの真珠腫です。

手術後の再発

手術で真珠腫をとったあとに再発することがあります。
手術で真珠腫の取り残しがあると、残った皮膚が増殖し垢を作って真珠腫が再発します。この場合は1年以内くらいで再発することが多いです。
鼻すすりなどで中耳の空気圧が低い状態が続くと、また鼓膜の一部が吸い込まれて真珠腫が再発することがあります。このタイプの再発(再形成)が起こる可能性は一生続きますので注意が必要です。
これまでの説明の図は一般的な真珠腫の説明となりますが、手術後再発の場合は前回の手術でどれくらい骨を削っているか、どの位置に再発しているかなどにより様々なタイプがあります。

耳硬化症

診断

音を伝える骨(耳小骨)の動きが悪くなって難聴になります。子供の頃からある場合は耳小骨奇形が疑われ、大人になってから起こる場合は耳硬化症が考えられます。鼓膜が正常なので以前は感音難聴(神経細胞に原因があることが多い)と間違われていた方もありましたが、この病気が広く知られるようになり、きちんと診断されるようになりました。片方の耳だけの方も、両方の方もあります。男性と女性を比べると、4倍の確率で女性に多くみられます。ちょうど結婚、出産の時期にあたって自覚する方もおられます。家族に同じ病気がある方もあります。難聴に対する対応は補聴器か手術になります。

耳硬化症の手術

耳の穴の中だけで手術が行われます。3D顕微鏡や4K内視鏡を駆使して細かいところも豊富な情報と微細なテクニックで手術が進行します。
1) 入院、全身麻酔で手術を行います。
2) 耳の外は切りません。全て耳の中の操作なので、傷は見えません。

3) 鼓膜をめくり、3つの耳小骨の動きを確認します。アブミ骨の動きが悪くなっているのが耳硬化症です。アブミ骨を人工のアブミ骨(テフロンピストン)と交換します。図中の白く見えるものがテフロンピストンです。これは金属ではないので手術後の生活で制限を受けることはありません。MRI検査も問題ありません。鼓膜を戻して手術終了です。

耳硬化症手術の入院中・退院後の注意事項

耳の手術の中でも内耳に開窓する手術なので、内耳障害を起こさないことが必要です。そのため通常の耳の手術に比べて、手術を受けられる方に注意をしていただかなければいけないことがいくつかあります。
1) 1週間は頭を下げないこと、シャンプーもシャワーなどで頭を下げないで行ってください。
2) 強く鼻を噛んだり、息んだりしないでください。便秘にも注意。
3) デスクワークは1週間すれば問題ありません。
4) 1ヶ月は10kg以上の重いものは持たないでください。
5) 1ヶ月は激しい運動はしないでください。
3ヶ月を超えると生活制限はありません。

担当医師

センター長,耳鼻咽喉科 部長

西村 信一(にしむら しんいち)

学会認定
日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医
日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門研修指導医
日本耳科学会耳科手術指導医

専門分野
耳鼻咽喉科一般

耳鼻咽喉科 特任顧問

奥野 妙子(おくの たえこ)

学会認定
日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科指導医・専門医

専門分野
耳の手術、難聴、めまい